グローバル・サプライチェーンの可視化(Python plotlyアニメーション)

 本記事は、以前に投稿した「サプライチェーン上でのPSI計画連携処理」の紹介記事の続きです。前回までの記事で生成されたサプライチェーン計画データから、各Purchase Orderが出荷・着荷する様子を地球儀の世界地図上でアニメーション表示してみました。

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図1 サプライチェーンの可視化


 以下のURLを開くと、地球儀が表示されます。地球儀をドラッグして地球を回転させ、日本を正面に持ってきます。左下にあるアニメーションの実行ボタンを押すと、グローバル供給拠点(日本)から欧州、北米に商品が供給される様子をアニメーション表示します。
https://yasushi-osugi.github.io

地球儀の世界地図上、着荷地別に色分けしたサークルが日本から欧州、アメリカ西海岸、東海岸に移動していきます。これは、購入オーダーPO分の商品がロット単位に搬送、供給される様子を示します。移動中のサークルにマウスを合わせると着荷地とオーダーの情報が表示されます。
また、表示されている地球儀を回転して、ドイツにフォーカスして、拡大するとハンブルグに着荷した後、在庫管理され、その先の販売チャネルに供給している様子も(末端の市場では、移動するオーダー・ロット数が小さくなるので少しも分かりにくいですが)見えます。

      図2. ハンブルグに着荷後、在庫管理され販売チャネルへ移動

 前回の記事で、グローバル90拠点のPSI計画を一年分シミュレーションして、すべての拠点間の購買データを生成しているので、一度にすべての国の供給状態をアニメーション表示することもできるのですが、そうすると供給量の少ない国への搬送の様子を判別できなくなってしまいます。

 ここでは、日本からドイツとアメリカ向けのサプライチェーンに絞って表示していますが、表示する国、供給ルートの切替表示は、抽出条件の指定で簡単に行えます。

 今回のアニメーションに使ったPython言語とライブラリについて、補足させていただきます。本アニメーションは、Pythonのplotlyという描画ライブラリと、地図の座標変換にprojというライブラリを使って表示しています。どちらもMITライセンスです。

 描画部分のPythonのコードは数行で、HTMLを自動生成してくれるので、Pythonの知識のみで比較的容易にアニメーションのWEB表示を作れます。むしろ、入力データとなるサプライチェーン上の供給データの時系列データを整備する作業、アニメーション用の座標変換処理などの前処理が少し手間のかかる部分です。
 今回は幸い、前回までの記事でご紹介してきたサプライチェーン・シミュレーションで、生成された各事業拠点・ノード間の購入計画データ約20万件があったので、これを活用して、地図情報の座標変換処理を組み込むことで比較的容易に入力データを生成することができました。

 前回の記事でご紹介したダイアグラム図も、plotlyの可視化ライブラリを使ってサプライチェーンを可視化しています。
「図3. サプライチェーン・ダイアグラム」のダイアグラム図は、各事業ノード間をつなぐ線の幅が年間取引量を表しており、各国の消費量、需給の親子関係など、サプライチェーン全体を視覚的に把握することができます。

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図3. サプライチェーン・ダイアグラム

以下のURLを開くとダイアグラム図が表示されます。

https://yasushi-osugi.github.io/PySI_V0R2SC_diagram_P/

このダイアグラム図の元データは、本記事の世界地図アニメーションで使用しているデータ (計画共通単位の購買オーダーPO:Purchase Order 約20万件) と同じデータを使用して、サプライチェーンの各拠点間を流れる物量を表現しています。
同時に、サプライチェーンの需給(親子)関係を定義したnode profileを可視化ライブラリに渡して、ネットワーク構造を表示しています。

 Sankey Diagramと呼ばれるこのダイアグラム図は、もともと蒸気機関のエネルギー効率を図示する目的で、アイルランド人のM.H.Sankeyが論文に提示したのが始まりだそうです。
 サプライチェーンの全体効率を考える上では、このSankey Diagramのエネルギー効率のアナロジーとして、素材のリサイクル率、商品の廃棄率などを含めたサプライチェーン・ダイアグラムの可視化は効果的と思います。

 例えば、商品・素材の廃棄率が問題になる衣食住の消費財で、それぞれのサプライチェーンの資源効率がどのように設計されているのか、前回記事のSankey Diagramや、今回のサプライチェーン・アニメーションのような全体の可視化、サプライチェーンの始まりから終わりまでのイメージが意識されて、価値観として共有されていれば、事業計画や商品企画、制度設計において、取り組み課題の絞り込みに役立つと思います。

2022年8月 盛夏
大杉 泰司